やまねこたち

艶子は俺を睨む。
豹が艶子の脚を掴んだ。

「ナイス豹」
「ぎゃあああああ!!!やだやだやだああ!!!」

必死に脚を動かすが、豹は顔色一つ変えない。

「っ、ゃ!」

俺は下の方に顔を向けた。
びくつく体が愛しい。

「…っ、蓮、二っ…」

艶子は顔を歪めている。
豹がそんな艶子の口を塞ぐ。

キスの音と、口から洩れる艶子の悲鳴がそそる。


艶子の力が抜けて、豹は口を解放した。
やっぱり彼女は泣き始める。

艶子の腹に舌を這わせると、泣きながら笑う。器用な奴だ。


豹の背中辺りで縛られていた艶子の腕を解放する。


「…、れ、」

俺が艶子の体に腕を回すと、艶子も痣だらけの腕を俺に回した。
こういうときだけ、素直。

「ぅ、…あ!」

びくりと反応する体。
背中に、艶子の爪が引っ掛かる。

「れん、じ」

熱く息を吐いて泣きながら俺の名前を呼ぶ。

「…っ、はぁ、」


そして俺が離れた頃には、艶子は泣くことしかできなかった。


「…まじで、本気で最低…」

毛布にくるまりながら、艶子は涙と共に悪態を吐く。

「まぁまぁ、そんな怒るなよって」

へらへらと豹は笑う。

「同意は得た訳だし」
「同意なんてしてない!!あたしがいつした?!」
「俺の部屋に入ったイコール同意だろ」

よしよしと豹は艶子の頭を撫でるが、艶子の機嫌は悪くなる一方だ。


「…!!パパ」
「え?!まじで?!何でこんなに早く、」

外からする音を聞き付けて、艶子は顔を上げた。
まずい。

親父は仕事のはずなのに。

「待て、艶子。冷静になれ。お前はちゃんと同意した」
「したかアホ」
「艶子ちゃん?穏やかにいこうぜ、俺らまだ死にたくない」
「死ね、この性欲マシーンが」

艶子はベッドからひょいと飛び降りる。が、体力を消費しているのか、思うように立てない。

「…くそっ!!」
「女の子がそんな言葉言っちゃいけません」

そのまま腕の力だけで、部屋から出る艶子。

「パパぁ!!!」

艶子は嬉々として叫ぶ。
娘思いの親父は、すぐに飛んできた。

「豹、どうする」
「どうするって…どうなるんだろうな」

豹は苦笑した。そう、苦笑するしかない。
廊下で艶子が持ち上げられるのを尻目に、俺らは溜め息をついた。

「パパ聞いて、豹と蓮二が」
「…あいつらか」

どすのきいた声で、唸るようにその言葉が紡がれる。
乱暴にドアは開けられた。

立っていたのは、勿論鬼。

「お、おつかれ親父」
「仕事疲れただろ??寝た方がいんじゃねぇの」

俺らは知らない間に身を寄せあっていた。
この中で1番恐れるべき存在、親父こと殺人鬼の元樹。

「…ケツの青いガキが一丁前に」

地を這うような低い声は、修羅場を踏んできた俺らでも恐ろしい。
親父の腕の中で、艶子は満足そうに笑っている。

「…麻月相手なら、お前らも初めてだろう」
「はっ?!なにいって、」
「今日は豹。明日は蓮二だ」

豹がぴたりと固まった。

「え?パパ、どう言うこと??」

俺と豹は動けなくなった。何の言葉も出ない。

「艶子、俺が慰めてやる」
「っ、え?!パパ、ちょ」

抱えられたままだった艶子に口付けを落として、親父は部屋から出ようとした。

「や、あたしもう2人相手してて、パパ??やっやだやだやだやだぁあああ!!!豹!蓮二助けてえええ」

艶子が纏っていた毛布がばさりと落とされた。
さらに悲鳴が聞こえる。

「…蓮二、どうする、俺今日初体験しちゃうぜ」
「俺明日みたいだから、感想聞かせろよ」
「麻月だってよ、麻月の相手なんてどんな女でも無理だろ」
「ちなみに俺らは男な」

豹は小さくなった。豹は今日か。かなり同情する。
奥の方で艶子のものと思われる悲鳴が響いた。

「まぁ、あいつもあいつで大変だな」

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