やまねこたち
□ □ □
現在あたしは全裸だ。
原因は、この熊男、パパにある。
「や、ちょ、パパぁ!!!そっちリビング!!!」
「大丈夫、見えない見えない」
「見えるから言ってんの!!!リビングに麻月もカレンもいるって!!!」
パパは気にしないでリビングのドアを開ける。
あたしは体を隠すために、パパに全力で抱き付いた。
「あら、おかえりなさい、ダディ」
「カレン、ただいま。お前も疲れただろう」
「ダディよりは楽よ」
カレンは長い手足をパパに刷り寄せて、自分が食べていたチーズをパパの口に当てる。
「ねぇ、ちょっとパパ」
先程から背中に視線を感じる。
あたしが全裸で戸惑っているのに全く気にしない、寧ろいい機会なんじゃない引き延ばしてあげるとか思ってるカレンはさておき、テレビのソファーの前で寛いでいる男の視線だ。
「カレン、ありがとう。アルトフランドのチーズだな」
「そう、正解。さすがダディね」
「なぁカレン、チーズは1人で食えるだろ」
「あらダディ、今日はこんなマッチ棒を食べるの?」
「誰がマッチ棒だ!!!間違ってないけど」
パパは気にせず笑っている。
そしてそのまま寛いでいる男、麻月の前に立った。
「ちょ、パパ冗談!!!あたし全裸!!!麻月みてる!!!」
「うん、綺麗だよ艶子」
「みんじゃねぇ変態!!!」
パパは咳払いすると、麻月に目配せした。
麻月は立ち上がる。
パパよりもでかいその身長で、見下ろされるとどうしても恐怖は湧いてくる。
麻月は苦手だ。
「どっちかが艶子襲ったの??」
麻月はあたしの背中を撫でながら、そう呟いた。
恐ろしく落ち着いた声が逆に怖い。
「どっちもだ」
「わぁ、お疲れ艶子」
「さわんな」
わざと怪我しているところを触るんだから、性格悪い。
「麻月、今日は豹で、明日に蓮二」
「本当??いいの??仕事行けなくなるかもよ??」
麻月は静かに笑った。
「行かせる」
「ふふ、それもそうか。了解、今日は豹ね」
「あら、可哀想ね」
カレンも笑い出す。
まさか。あたしは1つ有り得ないことが頭を過った。
麻月はバイだ。
「行こうか、艶子」
「やっやだやだやだぁあああ!!!カレン!!!助けて!!!」
「嫌よぉ、あたしこれから仕事なの」
「まつき、」
「艶子の声を楽しんでおくね」
抵抗も虚しく、パパに抱かれたままリビングを出た。
「ねぇパパ、仕事終わったばっかりでしょ??体によくないと思う」
「今からリフレッシュするじゃないか」
「なんで豹達と同じこと言うんだよ!!!」
そのままパパの部屋に運び込まれ、ベッドに落とされる。
「さっきも言ったけど、あたし豹と蓮二を相手したばっかりなんだけど」
「艶子なら大丈夫だ」
起き上がろうとした体を倒される。
パパはシャツを脱ぎ捨てた。
胸元に小さな赤い染みがついている。
「あぁ、これは俺の血じゃない」
「…よかった」
身に付けているものを脱ぎ捨てて、パパの肉体が露になる。
男共の中で、1番ガタイがいいのはパパだ。あたしとカレンは知っている。
「…元樹」
知らず知らずの内に、パパの名前を呼んでしまう。
力強い腕に、あたしがぽっきり折れてしまいそう。
あたしは息を吐いた。