世界の終りで愛を歌う

「おめでとう!」

他のレストランの客の声と共に拍手が起こる。


「皆さん、ありがとうございます! 私達は幸せになります! どうも! どうも!!」


妻は愛想よく笑い手を振って皆さんの祝福に答えた。


「みみみ……皆様……あああ……ありが……」


「このように私の夫は恥ずかしがるのが職業ですが、とても喜んでいます。ありがとうと!」



と緊張して声の出ない私の代わりに妻が答えてくれた。


そして記念のワインが運ばれて来て、

フルコースが終わってそれを飲みながら話をしていた。


「今夜は素敵な夜ね。今日はもう一つ大きな報告があるんだ。あなたのお父様がこの度、選挙に立候補する事になりましたー!」


父が選挙に。私は驚いた。だが、自分の分身が生まれる事に比べれば、

驚きは少なく、落ち着いていた。

父が最近忙しいが、手術をしない理由が分かった。


新しい外科医がいるな。先輩に当たってみよう。


最悪、大学を卒業する後輩に頼んでみてもいい。


父の抜けた穴を埋める為に。

北海道は妻の喜美枝が外科を取り仕切る。

そして東京は小田切。
さらば小田切! ざまあみろー!

まさか、小田切の子供じゃないよな……。

と一瞬思ったが、私の想像力と推理力は皆無に等しいので無駄な邪推は捨てた。


私は幸せに身を任せる事にした。
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