記憶 ―黄昏の蝶―


ユピテルの表情が、
複雑な色に変わっていく。


『…僕が、忘れてる…?僕が持っていたという時計は?永遠からの、解放?時が、進む…?』

『どうして、彼は笑っているのでしょう。どうして…僕に敵意を抱くのでしょう。』


何も知らずに、
何も分からずに!


『何をしたの。どうして、此所に居るの。どうして、記憶が消されているの。』

『――僕は、何!?』


心が読めると言った俺に、
わざと想いをぶつけているのが分かった。


じゃあ…
俺は?
誰に想いをぶつけたらいい…?


我慢…、出来なかった。


『――何故、知りたがるッ!?お前は逃げたくせに!自分で自分の記憶を消したくせに!!』

「――!?」

俺の頭の中では、

俺の世界が…、
俺の大切な人たちが、

ぐるぐると回っていた。


『僕ガ…僕ノ記憶ヲ、消シタ…?』

ユピテルは、当然ながら理解出来ずに困惑していた。


「…そんな…、どうして…」

『――どうして!?こっちが聞きてぇな!お前のおかげでこっちは良い迷惑だ。』

「…迷惑…。すみません…」

…あぁ、そうだ。
決して悪い奴じゃねぇんだよ…

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