記憶 ―黄昏の蝶―
悪い奴じゃねぇんだよ…
ただ、
自分の運命に、嫌気が差しちまっただけなんだろ…
『…お前の「永遠」はもう無い。それでも、自分が何者だったのか…知りたいか?』
「…知りたいです。」
金色の懐中時計。
「永遠」を手にした俺には、
もう「全て」が見えていた。
彼の心も、
彼のこれまでの経緯も、
自分に与えられた「力」も…。
『…知れば、辛い思いをするんだぞ?それでも良いのか…?』
彼は力強く頷いた。
怒りが消えていた。
「同族意識」なのか、
今あるのは深い悲しみだった。
ユピテルもまた…俺と同じ。
そして、
これから先の彼の運命が見え、
余計に悲しかった。
『…分かった。それも運命か…。記憶を戻そう。この街は、もうお前の前には現れない。残りの人生、達者で暮らせよ。じゃあな、先輩…。』
俺はそう言って、
くるりと彼に背を向けた。
七色に光る街に白く霧がかかり、再び別の場所に移ろうと、その姿は歪み始めた。
「…あの!…貴方!有り難う!…貴方の、お名前は…?」
…怒れない。
怒れはしねぇよ…