タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「姫よ、わがままを言うものではない」


王様が抑え込んだような声を出して、「不快」の意思表示をした。


どっこい、姫は余裕でそれを受け止める。


「まあ! 陛下はわが祖国の伝統ある習わしを、ただのわがままと仰るのですか!?」


「そんなことを言っているのではないっ」


「いいえ! はっきりと仰いました! あぁ、アザレアは深く深く傷つきましたわぁぁ!」


そう叫ぶなり姫は、扇でバッと顔を覆ってシクシク泣き声を出し始めた。


・・・ロコツにウソ泣き。姫、絶好調。


このお姫様、ほんとに大したツラの皮だわ。


この根性を見込んで、実は刺客として送り込まれたんじゃないの?


王様の気分がどんどん悪化して、まぶたがピクついてくる。


あの赤く染まる顔は、きっと血圧も急上昇してる。かなりヤバい。


姫さまがもし本当に刺客として送り込まれたんなら、確かにいい仕事してるけど・・・。


(その勝負、まったぁ!)


あたしは青い顔して、アワアワとふたりの顔を見比べた。


王様の気分を害したら「下賜やめた!」ってことになりかねないよ!


姫、姫! お願いだから!


王の導火線の火をパタパタあおぐの、やめてぇーー!!


狼狽してるあたしの隣に立ってるスエルツ王子が、あたしに負けず劣らず青い顔して、事の成り行きを見守っている。


あたしはバシバシと王子の足を引っ叩いた。


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