タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「ちっ」

「そう言わずに、聞くだけでも聞いてくれないか?」

「ちちっ」


・・・どうやら、すでに交渉が始まっているらしい。


よく会話が成立してるわねー。あたしには「ち」と「ちち」にしか聞こえないのに。


この短い「ち」が、どれほど多くの情報を伝達してんのかしら? 


生物って、とことん神秘的ねぇ。


「ほら、手みやげだ。受け取ってくれ」


そのブランの言葉に、あたしは慌てて畏まりながら魚を差し出した。


鳥の言葉は分からないけど、どうやら交渉は難航しているらしい。ここは謙虚に礼を尽くさないと。


「ちっ」

「ああ、これはオレの嫁のミアンだ。可愛いだろう?」


いきなりそんな風に言われ、あたしは思わず頬を染める。


や、やだちょっと。なに人前、いや鳥前でノロケてんのよ。恥ずかしいわね。


しかし、何をしゃべってるのか気になるわねー。


「ちちちぃ~」


「なんだと!? もう一回いってみろ!」


「ちょ、ちょっとブランったら。どうしたのよ急に?」


「オレの嫁に向かって何て言いぐさだ! ミアン、いまコイツが言ったことは気にするな!」


「・・・いや、気にしてないけど」


てかあんたがバラさなかったら、悪口言われた事にすら、気づかずに済んでたんですけど。


「ちちっ。ちっ。ちちちっ」

「・・・・・・」


鳥が何かを話し、それに対してブランが黙り込んでしまった。


白い毛並みが力なくうつむいてしまっている。


いったい何を言われたんだろう。あぁ、言葉が分からないってやっぱりもどかしい!

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