恋文
そして、何故かニヤニヤと笑った玲二さんがカウンターで待ち構えていましたー。
「…何ですか。」
「いんやぁ?お前はいつからアイドルになったのかなーと思ってな」
「ちーがうよ。アタシの高校にあるバカイベントのせい。」
「美男美女ランキングだろ?」
「あれ?知ってたんだ?」
玲二さんはそういうの疎そうなのに。
「知り合いが言ってたもんでな。」
玲二さんの知り合い?
高校生かな?
よく、こんな怖そうな顔の人と知り合いになれるなー。
アタシは悠哉さんがいなかったら絶対ムリだったよ。怖がってたよ、絶対。
「だが、しかし、お前が姫だったとはなぁ~」
「姫って言わないでよ。」
1位だからって、アタシのことを〝姫〟って呼ぶ人もいるけど、アタシは姫になったつもりも、なるつもりもない。
「あ、玲二さんなら1位取れるかもねー。顔怖いけど、一応イケメンだから。顔怖いけど。」
わざと、顔怖いけど、を強い口調で言ってみる。
姫ってバカにされたから、仕返し。
「なんで2回言った。」
「大事なことなので2回言いました。もう1度言います。大事なことなので2回言いました。」
「ほーぅ?無駄口叩くと悠哉について教えません。もう1度言います。無駄口叩くと悠哉について教えません。」
「店長、ごめんなさい。冗談だよ。」
「分かったら、ちゃっちゃっと仕事しろ。ほい、ケーキ。」
「んー」
ケーキとそれから飲み物を持って、さっき注文を取った2人の場所へ向かう。
どうやら、まっつちゃんは苺タルトがお気に召したようで、帰りに「すっごい美味しかったです。」と言ってくれた。
あの笑顔は嬉しかった。
働く喜びって、このことか。と妙に納得してしまった。
あの3人組も「また来ますね」と言ってくれた。
店員になってみて分かる。
感謝されるとこんなに嬉しい。
美味しそうに食べて貰えると笑顔がこぼれる。
アタシが作った訳じゃないのに。
バイトって楽しいなぁー。
午後6時を回ると、店内もだいぶ人が少なくなり、皿洗いを終えたアタシはヒマになった。
初めてのバイトで疲れたアタシは、カウンターに頭を預けた。
「なーにやってんだ。」
「疲れたから休憩~」
「これくらいで情けない。」と言うかと思ったが、上から降ってきたのは、珍しく優しい玲二さんの声だった。
「お疲れさん。」
アタシの隣にショートケーキが置かれ、玲二さんはアタシの頭をポンッと優しく撫でた。
「……え…?店長が優しいなんてどーしたの?熱中症?」
「人の優しさは大人しく受け取って置くもんだぞ。」
「んー。玲二さん、ありがと。」
「おう。それ食ったら上がって良いぞ。」
「ふぇーい。」
ショートケーキを口に運ぶと、適度な甘さがアタシを癒してくれた。
今度、お菓子の作り方でも教えて貰おうかな。
顔怖いくせに、本当は優しい店長に。