恋文
ほんのり甘いショートケーキを食べながら、何を考えるでもなく、ボーッとしてみる。
玲二さんのところでバイトして、しかもバイト代は〝悠哉さんのこと〟なんて、悠哉さんが知ったらどう思うのかな?
こんな子、きっと気持ち悪い。
でも、それでもアタシは悠哉さんのことをもっと知りたい。
そう思うから。
悠哉さんは太陽みたいだ。
大きくて、明るくて、温かい。
いつもアタシを照らしてくれるのに、ときどきアタシの表情を曇らせる。
雨雲がかかった曇天のように。
手を伸ばせば届きそうなほど大きいのに、どんなに手を伸ばしても届くことは決してない。
近くて、遠い、微妙な距離感。
届いてしまえば欲してしまうから。
人間はどこまでも貪欲で、欲張りだ。
こんな姿、悠哉さんには見せたくない。
ここでバイトしてることも秘密にしよう。
玲二さんには後で頼もう。
玲二さんなら、ニヤニヤと笑いながらOKしてくれるだろう。
あのニヤニヤはムカつくけど、我慢する他ない。
悠哉さんについて知れるまで、少しの間でも頑張ろう。
ボヌールのエプロンを眺めながら、少し口元が緩む。
初めてのバイト。
また、明日も来よう。
来れる日は毎日。
別に、楽しい訳じゃないから!
あくまでも情報収集の為だから!
自分に言い聞かせながら、口元の緩みを抑えるのが実に大変でした。
「よし、頑張ろう。」
ショートケーキの最後の一口を口に運ぶ。
やっぱり甘いショートケーキの味。
アタシも作れるようになりたいな。