恋文
「ライト…、ライト…、ライトかぁ!」
悠哉さんは何度か唸ったあと、何か思い付いたように楽しそうに叫んだ。
「さすがは高校生!アイデアが新鮮だね!それ貰っちゃおっかな~」
「えー、良いよー。」
「あ、良いんだ。」
別に盗まれて困るような意見でもないし。
今、即興で捻り出した意見だし。
「じゃ、考えとこ~!あー!早くオープンしたいなぁ!!」
すごく楽しみなのが伝わってくる。
プール開き前の小学生のように、ソワソワと落ち着かない様子で、意気揚々と氷の世界について語り出す。
「オープンはね、来年の夏の予定なんだ~。俺は今年が良いって言ったのに!」
「じゃあ、あと1年かぁ。」
「オープンしたら、すぐに予約が取れないくらいの人気がでるよ!」
こんなに楽しそうな場所、世間の人々が放っておく訳ない。
悠哉さんの言う通り、すぐに予約も取れないの人気になるかも知れない。
夏なんて特に商売時だ。
来年の今頃には、ここにお客さんがたくさんいて、みんな楽しそうに笑ってる。
それを見て、悠哉さんは嬉しそうに微笑むんだ。
でも、そんなことになったら、
「アタシもう、ここに来れないね。」
だってそうじゃない?
そんな人気が出ちゃったら、アタシみたいな学生は入れない。
悠哉さんのことだ、お客さんは、この近辺だけに収まらず、全国まで広がる予定なのだろう。
この大きさだ、それくらい考えていても不思議じゃない。
そうなると、余計にアタシは入れない。
それが社会であり、大人の脅威。
「アタシは高校生だもん。大人を押し退けて入る訳には行かないよ。」
「…じゃあ、また連れて来てあげるよ。」
悠哉さんが言った。
「大人の俺が、高校生で、まだガキのハルちゃんを連れて来てあげる。」
そして、ニコッと笑う。
…なんで、悠哉さんはいつもアタシに期待させるようなことを言うのだろうか。
さっきよりも、顔が熱い。
氷の柱じゃ抑え切れない思いを隠すように、アタシはそっぽを向いた。
「……約束ね。」
今のアタシの精一杯のデートのお誘い。
悠哉さんは二つ返事でOKした。
アタシの言葉の意味、分かってるのかなぁ?
「ハルちゃんが感動して泣いちゃうくらい、幻想的な世界にしとくよ。今よりも、もっと綺麗に。」
「今のままでも、じゅうぶん綺麗なのに。」
「ダーメ。これくらいで満足してちゃあ、先には進めないから。これの先を目指すよ。」
そっぽを向いているから見えない、悠哉さんの表情。
でも、なんとなく予想はつく。
期待に満ちた瞳を細めながら笑っているのだろう。
仕事、楽しそうじゃん。
ま、長くても来年には分かるらしいし、それまで悠哉さんのことを好きかなんて分からない。
正に、神のみぞ知る。というヤツだ。
神様なんて信じてないけど、たまには神頼みも良いかもしれない。
来年も、悠哉さんとここに来れますよう。
それまで、悠哉さんが待っていてくれますように。
アタシの気持ちがバレませんように。
バレて欲しいようで、1番バレたくない秘密。
悠哉さんの好きな人は、他に好きな人でもいるのかな?
そうであって欲しい。
悠哉さんが、ちゃんとアタシだけを見てくれるようになって欲しい。
アタシの貪欲な願いばかりが生まれては、心の闇に沈んで行く。