恋文
「店長って色々と無自覚ですよね。」
「は?」
よく、愛してる、なんて言えるもんだ。
これだから大人ってやつぁ。
高校生なんかが言う、大好きとは比べ物にならないくらいの破壊力だろ。
愛してるって!愛してるって!!
「なんでもないですー。店長に好きな人がいるなんて、素直に驚いてるんですよー」
「俺だって人間だ。好きな人くらい、いるさ。」
「片想い中でしょー?」
「まだ、な。」
ニヤッと口角を上げて笑う。
前、奈美さんのことベタ褒めだったから、てっきり、玲二さんも奈美さんのことが好きなのだとばかり思っていた。
けど、少し嬉しそうに笑う玲二さんを見て思う。
玲二さんの好きな人は、違う人だ。
あのドS魔王が愛してるって、少し嬉しそうに笑うんだ。本気で好きなんだろうなー。
いや、嬉しそうに笑うって言っても、いつも側にいるアタシでさえ分かりにくいほどの、ほんの少しの優しさを含んだ笑顔だ。
普通の人じゃ分からないだろう。
「自信満々だね。失恋して泣く玲二さんの姿なんて想像できないや。」
アタシが、からかうように笑うと、玲二さんはアタシのおでこの前にスッと手を伸ばした。
瞬間、ベシッと良い音が店内に響き、アタシのおでこには激痛が走った。
「っっったぁぁぁああぁぁぁあああ!!!!」
「そんなカッコ悪い姿、想像しなくて良いだろ。第一、なんで俺が振られるのが前提なんだ。」
ジンジンと鈍い痛みを残すおでこをさすりながら、不服そうにアタシを見下ろす玲二さんに、腹パンチを加える。
が、なにぶん手が短いもので、カウンター越しでは威力は半減してしまった。
「バーカ。もっと強く殴んねーと、痛くも痒くもねーよ。」
「距離感を考えて下さい、距離感を。」
「距離感は考えなくても良いが、店長に優しくする方法は考えた方が良いと思うぞ。」
「それなら、店員に優しくする方法を考えた方が良いですって。さっきのデコピンは痛かった。」
「大したことないだろ。どれ。」
玲二さんの大きな手が、アタシの前髪をかきあげた。
「あー…、赤くなってんなー。」
まるで他人事のような口調で、アタシのおでこに触れる。
誰のせいだと思ってんだか…。
「痛い。店長痛い。髪抜けるって。毛根死滅するから止めて。」
「店長は痛くないから大丈夫だ。」
本当に、この自己中ドS魔王店長が!!
怒りを込めて、アタシのおでこを見つめる玲二さんを軽く睨む。
「なーに店長を睨んでんだよ。」
「べっつに~?だーれも店長のことなんて睨んでないっすよ~?」
少し皮肉を込めて、両手をやれやれと顔の横で降って見せる。
すると、意外と単純な我が店長は、アタシの頬を思いっきり引っ張った。
「…………なにひゅるんれふか。」
あえてスルーしてやろうかとも思ったが、だんだんと頬の痛みが大きくなるのを感じて、反応をしてみる。