恋文
パフェを食べ終わると、悠哉さんは家まで送ってくれた。
別に、まだ太陽も真上に昇ってたし、歩いて帰れるって言ったのに、悠哉さんは「大人の好意には甘えとくもんだぞっ」とアタシの頭をクシャクシャにした。
その手が大きくて、温かくて。
帰り道、悠哉さんと他愛もない話をした。
それだけで嬉しかった。
「あ、ココ。この家。」
「ほいほい。とーちゃくっ!お客さんっ!」
「…なにその手。」
アタシの前に差し出された悠哉さんの手をマジマジと見る。
「送ってあげたから、お駄賃ちょーだいっ!」
「んー…しょーがないなぁ。」
なにかないかなーと、持っていた鞄の中を探る。
すると、指先に何かが当たった。
「お。あったあった、はい!お駄賃!」
悠哉さんの手に、苺ミルク味のキャンディーを1つ置くと、悠哉さんの表情は晴れやかなものになった。
この人、さっき苺ミルク飲んでたよねー?という疑問は置いといて、嬉しそうに笑う悠哉さんに、アタシも手を差し出す。
「アタシにも何かちょーだい!」
「えぇー!送ってあげたじゃーん!」
「それとこれとでは話が別です。」
むぅ、と押し黙ってしまった悠哉さんは、考えるように腕を組むと、あ!と小さく声を上げた。
悠哉さんは、アタシがあげたキャンディーをパクッと口に放り込むと、キャンディーの包み紙に持っていたボールペンで何か書き始めた。
「はいっ!」
その包み紙には電話番号とメアドが書かれていた。
「メアドあげるの忘れてたから!メールしてね!」
「うんっ!するする!毎日でもしますよ!」
「ははっ!そんなに嬉しいの?」
「そりゃあ、もう!」
アタシが素直に答えると、悠哉さんは「ハルちゃんは可愛いこと言うなぁ」と、はにかむように笑った。
「あ、そうだ!水曜日ヒマ?どっか行こうよ!」
その誘いを断る理由なんてないアタシは、間髪入れずに頷いた。
悠哉さんはまた、嬉しそうに笑ってから、車を発進させた。
悠哉さんの車が見えなくなった後も、キャンディーの包み紙を見てニヤニヤと口元の緩みが収まらなかった。
夜に『水曜日は学校サボれよ!迎えに行くから!』という、サボりを注意する気もないメールが来た。
それがなんだか嬉しくて、いつ学校を抜け出そうか、などと考えていた。
きっと、アタシはその日、恋をした。
自分でも気付かないうちに悠哉さんに魅せられていた。
悠哉さんの笑顔に温かさに優しさに。
学校内での恋じゃないから、そんな簡単に行かない恋。
あっちは片想い歴4年の一途な大人。
悠哉さんとアタシは住む世界が、全く違う。
見るものも、感じるものも、考えることも。
そんなアタシのことを誘ってくれるのは、どうとも思ってないから。
それでも、ただ単純に嬉しかった。
ただ単純に悠哉さんに恋をした。