ガーデンテラス703号
個室に遥斗と向き合ってふたりきり。
付き合っている頃はこういうシチュエーションもよくあったのに、今はとても緊張する。
座布団に正座して、両手を握り締めてそれを膝の上に載せる私。
でも遥斗は私と向きあっていても少しも気にならないのか、胡座をかいてくつろいだ様子で食べ物のメニューに視線を落としていた。
うつむき加減にメニューを捲る遥斗の顔は、付き合っている頃よりも大人っぽくなっていて引き締まっている。
遥斗、あの頃よりかっこよくなってるな。
二度目の再会を果たした元カレ。
その人の顔をまさかまたこんな距離で眺める日がくるなんて、別れたときは想像もしていなかった。
「あゆか、どれくらい腹減ってる?」
うつむく遥斗の顔に魅せられるようにぼんやりと眺めていると、不意に彼が顔をあげた。
「あ、え、えーっと…普通かな。遥斗の好きなものたのんでいいよ」
見つめてたことがばれてないか気が気じゃなくて、そっと目を伏せる。
「じゃぁ、適当に頼むな」
遥斗がそう言って、テーブルの端にあるタブレットを手に取る。