ガーデンテラス703号
「あ。それ、ホタル」
「ホタル――?」
シホの言葉に、私はさっきより深く頭を横に傾ける。
「あゆかが知らない男がいるとか言うから、勘違いしちゃったじゃん」
「え、何を?」
「部屋にいたやつのこと」
「え?」
「言わなかったっけ?あたし、幼なじみともルームシェアしてるって」
「それは聞いた」
「そうだよね、言ったよね」
受話器の向こうでシホが頷く気配がする。
それからシホは、平然とした声で言葉を続けた。
「あゆかが見たの、あたしの幼なじみ。言わなかったっけ?同居してるあたしの幼なじみは男だよ」
シホの言葉に、一瞬思考回路が止まる。
「ちょっと待って!それは聞いてな――…」
「あ。あゆか、ごめん。携帯電池切れそう。またあと――」
シホが私の言葉を遮る。
それからほどなく通話は途切れ、ツーツーと無機質な音が耳に響いてきた。