ガーデンテラス703号


「あ。それ、ホタル」

「ホタル――?」

シホの言葉に、私はさっきより深く頭を横に傾ける。


「あゆかが知らない男がいるとか言うから、勘違いしちゃったじゃん」

「え、何を?」


「部屋にいたやつのこと」

「え?」


「言わなかったっけ?あたし、幼なじみともルームシェアしてるって」

「それは聞いた」


「そうだよね、言ったよね」


受話器の向こうでシホが頷く気配がする。

それからシホは、平然とした声で言葉を続けた。


「あゆかが見たの、あたしの幼なじみ。言わなかったっけ?同居してるあたしの幼なじみは男だよ」


シホの言葉に、一瞬思考回路が止まる。


「ちょっと待って!それは聞いてな――…」
「あ。あゆか、ごめん。携帯電池切れそう。またあと――」


シホが私の言葉を遮る。

それからほどなく通話は途切れ、ツーツーと無機質な音が耳に響いてきた。




< 11 / 393 >

この作品をシェア

pagetop