ガーデンテラス703号
「あー、いや。なんでもない」
「えー、気にな――……」
「でもっ!」
なんでもないと言っているのに、まだ食いついてくるシホの言葉を大きな声で遮る。
「でも。かっこよかったけど目つきが悪かった。睨まれてちょっと怖かったし」
ドアの向こうにいた彼の、気性の荒いネコみたいに釣りあがった目を思い出す。
裸だったこともリアルだったけど、私を見下ろすあの眼差しもリアルだった。
だからきっと、あれは白昼夢なんかじゃないはずだ。
そう思ったとき、シホが「あぁ」と小さく声を漏らした。
「何?」
軽く頭を横に傾けた私に、シホが言った。