ガーデンテラス703号


「ごめん……」

急いで謝ったけど、横目で見下ろしてきたホタルに睨まれた。


「あんまり近づいてくんな。お前、冷てぇ」

低い声で文句を言われたから、ビビってホタルから離れる。

怖いから半身だけ傘に入れてもらって歩いていたら、また睨まれた。


「そんな離れてたら濡れるぞ」

そう言って、ホタルが私の腕を引っ張る。


「だって、近づいたら冷たいって……」

怒られたから離れたのに。

反論しようとすると、今度は無言で睨まれた。

その目が怖いから、もう余計なことは言うまいと口を閉ざす。

ひとつの傘の下で、ホタルにぶつからず尚且つ雨にも濡れないように歩くのはすごく難しい。

ホタルとの距離を慎重に保ちながら歩いてマンションに着く頃にはひどく疲れてしまって。

部屋の玄関に入ってようやく息をついたときの疲労度はハンパなかった。


「ただいま……」

小さな声でそう言ったけど、リビングは暗くてシホからの返事はない。

シホの靴が揃えて置かれているから、部屋で寝てるのかもしれない。


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