ガーデンテラス703号
◇
家に帰ると、玄関に見慣れない男物の靴があった。
会社勤めをしている人が履くような、黒の革靴。
しっかり手入れされているそれは、高価そう。
ホタルのものとはちょっと違うような気がする。
お客さんでも来てるのかな。
「ただいま」
廊下を通ってリビングのドアに手をかける。
そのとき、私が自分で開けるより先にドアが開いた。
「おかえりなさい」
聞きなれない男の人の声がして顔を上げると、すらっと背の高いスーツ姿の男の人が目の前に立っていた。
端整な顔立ちをした、知的で大人な雰囲気が漂うその人が、首を傾けて微笑む。
とても品のある優しい表情に、思わずドキリとした。
誰かに似ているような気がしないでもないけど……
こんなにかっこいい人は知り合いにいないはず。
芸能人の誰かにでも似てるんだろうか。
緊張気味に笑い返すと、彼が私をエスコートするようにリビングのドアを大きく開く。