ガーデンテラス703号




家に帰ると、玄関に見慣れない男物の靴があった。

会社勤めをしている人が履くような、黒の革靴。

しっかり手入れされているそれは、高価そう。

ホタルのものとはちょっと違うような気がする。

お客さんでも来てるのかな。


「ただいま」


廊下を通ってリビングのドアに手をかける。

そのとき、私が自分で開けるより先にドアが開いた。


「おかえりなさい」

聞きなれない男の人の声がして顔を上げると、すらっと背の高いスーツ姿の男の人が目の前に立っていた。

端整な顔立ちをした、知的で大人な雰囲気が漂うその人が、首を傾けて微笑む。

とても品のある優しい表情に、思わずドキリとした。

誰かに似ているような気がしないでもないけど……

こんなにかっこいい人は知り合いにいないはず。

芸能人の誰かにでも似てるんだろうか。


緊張気味に笑い返すと、彼が私をエスコートするようにリビングのドアを大きく開く。


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