ガーデンテラス703号
「あ、ごめんね。こんなところで足止めさせて。中にどうぞ」
「あ、はい……」
部屋の住人でもない彼がそんなことを言ったのが少し不思議だった。
だけど、そんな小さな違和感など払拭するくらいに自然に紳士的に部屋にエスコートしてくれるから、素直に頷いてしまう。
「おかえり、あゆか」
リビングに入ると、シホが珍しくキッチンに立っていた。
振り向いて笑いかけてくる表情や声が、いつになく明るい。
それとは対照的に、ホタルは怒ったような顔で腕組みをしてソファーに座っていた。
いつもとは違うふたりに戸惑っていると、スーツ姿の彼が私の後ろに立った。
「君が新しくここに住むことになったあゆかちゃんだよね」
どうやら私のことを知っているらしい彼が、肩にポンと手をのせてくる。
「あ、はい。えーっと……」
あなたは……?
そう問いかけようとしたら、彼が私の肩に手をのせたまま横から顔を覗き込んできた。