ガーデンテラス703号
目の前にいる男は私の白昼夢ではなく、ホタルという名前のシホの幼なじみ……なのかもしれない。
だけど。それにしても。
目つきと声が怖すぎる。
とりあえず、ここは一度退散しよう。
改めてつかまれた腕を解こうとすると、彼がまた私の引っ張りあげるようにして引き止めた。
「どこ行く気だよ。もうすぐシホ帰ってくるんだろ?」
彼が不機嫌そうな低い声でそう言って、私の腕を引っ張る。
抗えないくらいの強い力で引っ張られた私は、彼によって703号室の部屋の前に引き戻された。
「どうぞ」
彼がそう言いながら、部屋のドアを開ける。
その声は無愛想で、しかも全く抑揚のない棒読みで、とても歓迎されてるとは思えない。
開いたドアの前で中に入るのを躊躇っていると、後ろに立っていた彼が私の肩を押した。
押し込まれるように部屋の中に入った私の背後でドアが閉まる。
不安な気持ちで振り返ると、彼が冷たい目で私を見下ろしていた。