ガーデンテラス703号


スマホを耳から離してため息をつくと、シホが私の肩をたたく。


「どうしてため息ついてんのよ。新しい出会いのチャンスだよ」

「そうかな。私、知らない人との飲み会って苦手……」

憂鬱な気持ちでまたため息をつくと、シホがけらりと笑った。


「遥斗の先輩でしょ?完全に知らない人ってわけじゃないじゃん。友達の知り合いは友達っ!」

そう断言するシホは、何だか楽しそうだ。

さっきまで基さんが結婚しちゃうってひどく落ち込んでたくせに。

ポジティブで羨ましい。


「そんな単純な話じゃないよ。シホこそ、基さんはもういいの?」

呆れ顔で訊ねると、シホが一瞬真顔になった。


「いいとか悪いとかじゃなくて、どうにもならないんだもん」

ついさっきまで楽しそうだったシホの声のトーンが下がる。


「ごめん……」

触れてはいけないところに触れてしまったのだと気付き、咄嗟に謝る。


「どうして謝るの?気にしてないし。それより、来週楽しみだな。仕事帰りに新しい服でも買いに行こうかな」

にこっと笑ったシホが、また明るい声を出す。

それが無理して作った声なのかどうかはわからないけど、シホは来週の合コンで基さんのことをふっきりたいのかなと思った。


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