ガーデンテラス703号
「さっき兄貴にちやほやされて浮かれてたし?お前もどうせ、シホと似たようなこと考えてんだろ。よかったな、将来有望そうな男紹介してもらえそうで」
ホタルの口調がなぜかものすごく嫌味っぽい。
「私は別に浮かれてなんか……」
反論しようとしたけど、ホタルは私の話を聞こうともせずにさっと背を向けて自分の部屋へと入っていった。
いったい何なんだ。
私は来週の合コンなんて全然乗り気じゃないし、基さんにちやほやされた覚えもない。
今だって憂鬱で仕方ないのに。
勝手な言いがかりをつけられたことに、だんだんと腹がたってくる。
「何なのよ。私だって、行きたくて行くわけじゃないんだから」
つぶやいてみても、固く閉ざされたドアの向こうにいるホタルに私の声など届かない。
憂鬱なうえに不愉快な気分にさせられて、すっきりしない気持ちのままお風呂に入る。
温かいお風呂にじっくりと浸かって、嫌な気持ちが流れていくようにゴシゴシ身体を洗ってみたけれど、憂鬱な気持ちと不愉快な気分はこれっぽっちも流れ落ちていってくれなかった。