ガーデンテラス703号
◇
「あゆか、森岡さんに返事した?」
先に仕事を終わらせた香織が、デスクを離れる間際に私にこそっと耳打ちしてきた。
「あー、まだだ」
香織に言われて、森岡さんへのメールの返信をしていなかったことを思い出す。
午後から仕事が立て続けに入ってきて、すっかり忘れていた。
「えー、森岡さんから連絡きてるんじゃない?もしかしたら、もうその辺りで待ってるかもよ?早く仕事切り上げて帰りなよー」
香織は私に向かってにやっと笑いかけると、肩をぽんぽんと叩いて先にオフィスを出て行った。
香織が帰って30分ほどしてから、私もパソコンを閉じてデスクから腰をあげる。
カバンからスマホを取り出して確かめると、メッセージの通知が一件届いていた。
森岡さん……?
ドキドキしながらよく見ると、それは森岡さんではなくホタルからのメッセージだった。
どうしてホタル……?
そういえば、一週間ほど前に「社交辞令」だとか言って連絡先を教えられたんだ。
それから特にホタルから連絡がくることもなかったし、私から連絡する用事もなかったから登録されていること自体忘れていた。