ガーデンテラス703号


そういえば、父親以外の男の人が運転する車の助手席に乗るのって初めてかもしれない。

遥斗と付き合ってたときはまだ学生で、遠くに出かけるときはだいたい電車だった。

緊張気味にちらっと横を見ると、ハンドブレーキに手をかけた森岡さんと目が合った。


「あゆかちゃん、何食べたい?」

車を発進する準備をしながら、森岡さんが笑いかけてくる。

こういうとき、なんて答えたらいいんだろう。

考えたけど、咄嗟に気の利いたレストランが提案できなくて困ってしまう。


「あの、私は別に何でも……」

「うーん。車じゃなかったらおすすめのバーがあるんだけど、俺飲めないしな……」


肩を竦めながらそう答えると、森岡さんがちょっと考えるように視線を上に向けた。


「あゆかちゃん、結構腹減ってる?」

「そう、ですね。まぁまぁ……」

「じゃぁ、中華どう?この近くに、最近教えてもらって気になってた店があるんだけど」

「中華、好きです」

「じゃぁ、決まり」

庶民的な海鮮焼きそばとかラーメンをイメージしながら頷くと、森岡さんが笑った。



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