ガーデンテラス703号
◇
「あの、ほんとにいいんですか……?」
車が自宅マンションに近付く頃、ルームミラー越しに森岡さんと目が合う。
すぐにミラーからフロントガラスへと視線を移した森岡さんは、マンションの前で車を停めると、運転席から降りて助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
車から降ろしてくれた森岡さんは、あえてそうしているのか、私の質問には応えない。
「あの、森岡さん。食事代……」
「いいよ、俺が勝手に誘ったんだし」
もう一度そう言うと、彼は私を見下ろしてにこりと笑う。
その笑顔に思わずドキッとしてしまった私は、慌てて足元に視線を落とした。
森岡さんが頼んでくれたコース料理を、私はデザートまで残さずペロリと平らげた。
特に、テレビ番組で見たことのある、他所よりも大きなエビを使ったエビチリは、ぷりぷりで最高だった。
料理の美味しさはもちろんのこと、森岡さんは話をするのが上手で、食事をしながらその場が気まずくなったり退屈しないように気を遣ってくれていた。
だから、レストランでの食事はとても楽しくて、お腹も心も満たされた。
すごくいい時間を過ごさせてもらったから、これはもう、予算オーバーでも仕方ない。
そう思って、いつでもカードを出せるようにと身構えていたのに、森岡さんの行動はレストランを出るまでとてもスマートだった。