ガーデンテラス703号
前髪をあげたホタルが、顕になった私の額を親指ですーっと撫でる。
な、何……!?
突然のできごとに、驚きと緊張で固まりながら大きく目を見開く。
そんな私を真顔で見下ろしていたホタルが、やがて口を開いた。
「あ、へこんでる」
「え?へこむ?」
ホタルに真顔でそう言われると、全然冗談に聞こえない。
まさかとは思いながら額に触れようとすると、ホタルが突然クッと声をたてて笑った。
いつも怒っているみたいなつり目が、少し細められただけで、一変して優しげになるから、ドキッとした。
「そんなわけねーだろ。ちょっと赤くはなってるけど」
ホタルがバカにするような口調でそう言って、お菓子の箱がヒットしたあたりに軽くデコピンを食らわしてくる。
「ちょ、痛い……」
不満げに見上げると、ホタルが唇に綺麗な弧を描いて機嫌良さそうに笑った。
「帰るぞ」
エラそうな物言いも、デコピンされたことにも納得いかないのに、自分に向けられたホタルの笑顔にだけはなぜかキュッと胸を締め付けられた。