ガーデンテラス703号
「あぁ、もう……」
つぶやきながら額をさすっていると、目の前に黒い影が広がった。
「何してんの?」
低い声が聞こえて顔をあげると、いつのまにか買い物を終えたらしいホタルが、呆れ顔で私を見下ろしていた。
「あ、ちょっと。アクシデントで……」
「ふーん」
慌ててお菓子を拾い集めて立ち上がる。
急いで、腕の中に集めたお菓子を棚に戻していると、ホタルがそんな私の横顔をじっと見てきた。
「あの、何……?」
睨むようにじっと見てくるホタルの目が少し怖い。
私の不注意に、イラついてるのかな。
最後のひとつを棚に片付けてそっとホタルのほうに顔を向けると、彼がおもむろに私に近づいてきた。
突然近くなった距離に、後ずさるタイミングを逃して立ち竦む。
次の瞬間、すっと伸びてきたホタルの手が、前髪を掻きあげるようにして額に触れたから、驚きのあまり心臓がドクンと大きく跳ね上がった。