ガーデンテラス703号


その瞬間は、ドキドキしてとても衝撃的だったはずなのに。

私の中で、額に落とされた森岡さんのキスが、ホタルの手のひらの熱に簡単に上書きされてしまっていた事実に戸惑った。


私ってばおかしい。

ただおでこを触られただけなのに、それがキス以上に強く印象に残るなんて。

ホタルとコンビニに寄ってうちに帰ってきている間に、森岡さんと高級中華料理店で食事した今夜の記憶が薄れてた。

そのことがとても気まずいことのように思えて、お風呂に入りながら森岡さんと過ごした時間を思い出す。

レストランの雰囲気。

一緒に食べた料理。

運転する彼の横顔。

彼と交わした言葉。

それから別れ際に落とされたキス。

それらを全部思い起こしてから、お風呂から出た。

部屋に戻ってスマホを見ると、森岡さんからメッセージが着ていた。


今日のお礼と、また会いたいという誘い文句。

彼から届いたメッセージの文面を何度も読み直しながら、返信する内容を考える。


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