ガーデンテラス703号


何分も悩んで、ようやく指を動かそうとしたとき、誰かが部屋のドアをノックした。


「はいっ」

メッセージを作ることに集中していたから、ノックの音に驚いて声が裏返ってしまう。

ノブが回る音がして振り向くと、半分ほど開いたドアからホタルが顔を覗かせていた。


「な、何?」

「あぁ、シホがカフェラテ作れって言うから淹れるけど、お前もいる?」

不自然な私の反応に、怪訝に首を傾げながら、ホタルが訊ねてくる。


「カフェラテ……」

ホタルがコーヒーを淹れるときは、たいてい豆から挽いて作ってくれる。

だから、きっと美味しいだろうなと思ったけど……

メッセージを作りかけている森岡さんに対しての気まずさから、私は小さく首を横に振った。

今ホタルの誘いを受けたら、森岡さんに返信するのを忘れてしまいそうな気がする。


「ごめん。私、もうすぐ寝るからカフェインはいいや」

「だよな。了解」

断ると、ホタルはそれ以上私を誘うことなくあっさりとドアを閉めて部屋から出て行った。



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