ガーデンテラス703号


「おやすみ」

唇に笑みを湛えたまま、ホタルがそう言って部屋を出て行こうとする。

私は一度払いのけたバスタオルを胸の前に手繰り寄せると、それを強く握りしめながら何度も頷いた。

ホタルが部屋を出て行くと、胸の前に引き寄せたバスタオルに顔を埋める。


森岡さんに返信をしなければと思うのに、脳裏に鮮明に浮かび上がるのは私を見下ろして笑うホタルの顔ばかりで。

速くなった鼓動は、なかなか治らなかった。

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