ガーデンテラス703号


ホタルの声に反応して一瞬立ち止まってしまった、自分の胸が震えるのがわかる。

部屋に戻ってベッドに潜り込んでも、彼の声は耳に残って離れなかった。

森岡さんからの誘いに、どうしても乗り気になれなかった理由が今はもうはっきりわかる。


香織に指摘されたとおりだ。

私は、ホタルのことが気になってる……

目を閉じてホタルの笑った顔を思い浮かべると、いつになく胸がドキドキした。

誰かのことを考えて、こんなふうに胸が高鳴るのはひさしぶりのことで。

なんだか、風船につかまって浮かんでるんじゃないかと思うくらい、心と身体がふわふわとする。

懐かしくも思えるこの感情が、なんだか気恥ずかしい。

だけど、次の瞬間に、ふと彼が寝言でつぶやいた彼女の名前が蘇ってきた。

ふわふわとした浮かれた気持ちが、急にズシンと重くなる。


ホタルが無意識でシホの名前を呼んだのは、どうしてだったんだろう……

付き合いの長い幼なじみだから?

長年の付き合いで、一緒に生活してるから?

それとも……



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