ガーデンテラス703号
「もう充分飲んできただろうが。ヤケ酒にあゆかを巻き込むな」
ホタルはシホに差し出されたビールを受け取ると、手のひらでペチリと彼女の額を軽く叩いた。
「巻き込んでなんかないよ。ねぇ、あゆか」
ホタルをふてくされた顔で見上げたあと、シホが私に同意を求めてくる。
無言で苦笑いを浮かべていると、ホタルがため息をついた。
「こいつには俺が付き合うから、お前は寝てていいよ」
ホタルが私にそう言って、シホに向き合うように座る。
「うん、でも私も少しなら……」
ホタルに言われたからといって、傷心に見えるシホをこのままにして先に寝ちゃうのも薄情な気がして気になる。
なんとなく、一番近かったホタルの隣の椅子に腰掛けると、座ったばかりの彼がすっと立ち上がった。
「じゃぁ、あゆかは紅茶にする?俺らは朝ゆっくりだけど、お前は仕事で朝早いだろ」
「あ、うん。ありがとう……」
遠慮がちに頷いたら、キッチンに向かおうとしていたホタルが、私を振り返って微笑むように口角を引き上げたからドキリとした。