ガーデンテラス703号


シホの悲しそうな声を聞いたら、「飲むのをやめろ」とは言えなくなった。


いつもより丁寧に施されたメイクも、気合を入れてアップにした髪も、綺麗な濃い青のドレスも。

全部、すごくシホに似合ってる。

それは全部、基さんの結婚式に出るために。

大好きな人の幸せを祝うためにシホが選んだものだけど……

基さんが選んだ人は、シホではない別の人なんだよね。

基さんの結婚を、だいぶ前から受け入れる努力をしてたシホだけど、やっぱりそれを目の当たりにするのは辛かったのかな。

ドレスのままで、ビールをがぶがぶ飲むシホを見つめながら、私は彼女にどんな言葉をかけたらいいかわからなかった。


「あー、シホ。お前、やっぱり飲んでんのか……」

やけ飲みしているシホを見守っていると、帰宅後すぐに部屋に戻って私服に着替えたらしいホタルがリビングに入ってきた。


「やっぱりって何よ。いいじゃない。今日はおめでたい日なんだから、ホタルもこっち座って祝おうよ」

シホはそう言うと、私用に持ってきたまだ開けられてないビールを呆れ顔のホタルに差し出した。


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