ガーデンテラス703号



ほんの一瞬優しく微笑まれただけなのに、それが私の心臓に与えた破壊力はものすごくて。

手のひらで思いきり鷲掴みにされたみたいに、心臓がぎゅんと痛くなる。

単純だけど、さっきホタルにバカにされたときの悔しさや悲しさが全部一気に吹き飛んで、胸に残ったのはただ彼に対する好意の気持ちだけになっていた。

部屋の前で茫然とする私にホタルが背を向ける。


「何なの、あんた」

自分に向き直ったホタルを、シホが呆れ顔で見ている。

もう振り返らないホタルの背中を見つめながら、私は後ずさるように部屋のドアをそっと閉めた。

< 242 / 393 >

この作品をシェア

pagetop