ガーデンテラス703号


「もう、ホタルがよくわかんない意地悪するからあゆか行っちゃったじゃない」

「は?意地悪なんてしてねぇよ」

「してたでしょ。優しくしてたと思ったら、急に意地悪して。何なの、あんた?謝りなさいよ」


部屋のドアを開けた私の背後で、シホとホタルが口ゲンカする声が聞こえてくる。


「あゆか」

そのまま無視して部屋に入ろうとしたら、突然ホタルに呼び止められた。

彼に呼ばれた自分の名前だけが、なぜかものすごくはっきりと耳に届いて、無視するつもりだったのについ振り返ってしまう。

目が合うと、ホタルが口角を意地悪くつりあげて笑ったまま、すっと一瞬目を細めた。

いつも人を睨んでるみたいなホタルの顔が、瞬間的に穏やかで優しいものになる。

その顔から目をそらせずにいると、ホタルがゆっくりと口を開いた。


「おやすみ」

たったひとこと。

それだけ言うと、優しかったホタルの表情が、人を睨んでるみたいないつもの顔に戻る。



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