ガーデンテラス703号



森岡さんのほうに顔を上げたら、カウンター席の向こう側でふたり組の女性客に注文をとっているホタルの横顔が見えた。

彼が働いている姿は初めて見る。

注文を終えたホタルが、女性客たちにほんの少し笑顔を見せる。

それが接客用の営業スマイルだとはわかっているのに、とても複雑な気分になった。

注文を受けていた女性客ふたりが、立ち去るホタルの背中をチラチラと見ながら何か言い合っているのが見えた。

おそらく彼の話題で盛り上がっているであろう女性客ふたりから目をそらす。


「本当に、違います」

だいぶ間を空けて私がそう答えたら、森岡さんがクスリと笑った。


「かなり間があったけど。でもあの店長、そんなに愛想がいいわけじゃないけど、イケメンだよね。この店の女性客の何人かは店長目当てで通ってるんじゃないかな」

カウンター席の向こう側の女性客たちの反応を見たら簡単に予想がつくことだったけど。

森岡さんの言葉に、私は少しショックを受けていた。


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