ガーデンテラス703号
そのとき、電話を終えたらしい森岡さんが、奥の廊下からこっちに戻ってくるのが見えた。
同じように森岡さんの気配に気付いたホタルが、まるでついさっきまで何事もなかったかのように、澄ました顔で空の小皿をさげる。
「勝手にすればいいけど。飲み過ぎんなよ」
去り際に、私と目を合わせながらホタルがそっとささやいてくる。
他人みたいな冷たい態度をとるホタルだったけど、最後にかけてくれたひとことはとても優しかった。
そんな些細な言葉にドキリとして、頬が熱くなる。
「ごめんね、あゆかちゃん。ひとりにして」
うつむいて座っていたら、戻ってきた森岡さんが笑いかけてきた。
「いえ」
「あれ、あゆかちゃんなんか顔赤くない?飲みすぎた?」
うつむいてい首を振っていたら、不意に森岡さんが顔を近づけてきた。