ガーデンテラス703号


「この辺、何かあるんですか?」

「特に何も。あ、駅前の繁華街を抜けたところに、小さい公園があったかも」

「そうなんですね」

「酔い覚ましに、ちょっと付き合ってくれる?」

笑顔でそう言われて、私はちょっと迷ってから頷いた。

散歩に付き合うくらいで、食事代をチャラにしてしまっていいのかな。

手に握ったままの財布をしまえずにいたら、森岡さんに笑われた。


「財布、しまっていいよ」

奢ってくれると言ってるのに、あまり食い下がるのも失礼かもしれない。

私は小さく頷くと、お礼を言ってカバンに財布をしまった。


「じゃぁ、行こっか」

私が財布をしまうのを確認すると、森岡さんが隣に並んでとても自然な流れで私の肩を抱いた。

彼の大きな手が私の右肩を包んだ瞬間、緊張でドクンと心臓が跳ねる。

ドキドキしながら森岡さんの横顔をちらっと見上げたら、彼は慣れた様子でにこりと微笑んで私をエスコートするように歩き始めた。


< 272 / 393 >

この作品をシェア

pagetop