ガーデンテラス703号


今の状況で、森岡さんにどういう態度をとるのが正解なのかわからなくて、逃げるようにぎゅっと目を閉じる。

そんな私に、さらに顔を寄せてくる森岡さんの吐息がかかる。


このまま、彼を受け入れる……?


目を閉じたまま覚悟を決めたそのとき。

あたりの静寂を破るほどのけたたましい音をたてて、私のスマホが鳴った。

はっとして目を開けると、同じタイミングで森岡さんも私に近づけていた顔を離す。

ショルダーバッグの中から着信を伝えるスマホはなかなか鳴り止まない。

出ていいかどうかわからなくて困っていたら、森岡さんが不愉快そうに顔を顰めた。


「いいよ、出て」

「あ、すみません……」

穏やかで優しい雰囲気だった森岡さんの声が、さっきまでよりも少し低くなる。

怒らせてしまったのかもしれない。

私はしつこく鳴り続けるスマホをショルダーバッグから引っ張り出すと、相手をよく確認せずに電話に出た。


< 279 / 393 >

この作品をシェア

pagetop