ガーデンテラス703号


エントランスの鍵を解除して待っていると、ほどなくして今度は玄関のチャイムが鳴った。


リビングで待機していた私は、廊下を小走りで駆けて玄関の鍵を開ける。


「おかえりなさい」

内側からドアを押し開けると、ホタルが無言で睨むように私を見下ろしてきた。


「な、に?」

ただ家の鍵を開けただけなのに。

睨むように見てくるホタルの目が怖くて数歩後ずさる。

そうしたら、玄関に入ってきたホタルが後手にドアの鍵をかけながらクッと笑った。


「いや。ほんとに帰って来たんだなと思って」

「だって、ホタルが帰れって言ったんじゃない。鍵忘れたから家に入れないって」

ホタルが何だか人をバカにするような言い方をするから、私は少し気分を害した。

先に帰ってきて、ホタルのために鍵を開けてあげたんだから、彼がまず最初に言うべきなのはお礼の言葉なんじゃないかと思う。

表情には出さないように、心の中だけでむっとしていたら、ホタルがにやりとした笑みを浮かべながら廊下に上がってきた。


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