ガーデンテラス703号
ソファーで押し倒されて、恋人同士みたいなキスを交わしたのがちょうど2週間前。
それからどんな顔をしてホタルに会えばいいのかも、何を話せばいいのかもわからなくて、私は徹底的にホタルを避けていた。
だから、こんなふうに間近で顔を合わすのはひさしぶりになる。
ひさしぶりなせいか、そばにいるだけでホタルのことを異常に意識してしまって、胸のドキドキが止まらなかった。
「あゆか?」
シホが黙ったまま固まっている私の名前を不審げに呼ぶ。
そこでようやく、私ははっと我に返った。
「あ、ごめん。私はえっと…シホと同じで」
「かしこまりました」
慌ててそう言うと、小さく会釈したホタルが私を見ながらほんの少し口角を引き上げた。
それは、営業用にお店にいる他のお客さんに向けている笑顔と大差ない。
ホタルを前にして、私は緊張と胸のざわつきが治らない。
それなのにホタルのほうは、私とシホが店に現れても顔色ひとつ変えない。