ガーデンテラス703号
2週間前の夜にキスを交わしたのが嘘だったみたいに、平静な顔をして私を見てきた。
あの夜からものすごくホタルのことを避けまくってきたのに、何事もなかったように話しかけてきて、そして必要以上には話さない。
あの夜のことは、夢だったのかな。
ホタルの態度がいたって普通なので、私はだんだん自信がなくなってきた。
やっぱり、ホタルのことを意識しすぎて気にしているのは私だけだったんだ……
そう思ったら、結構ショックだった。
うつむく私には目もくれず、ホタルがオーダー票を持って立ち去ろうとする。
「あ、ホタル。一杯目は奢りにしてよね」
ホタルを引き止めたシホが強引にそんな条件を押し付ける。
それに対してホタルが何か文句を言っていたような気がするけど、ふたりの会話はほとんど私の耳には入ってこなかった。