ガーデンテラス703号



「うるせーよ」

ホタルは地響きにも似た低い声を出すと、シホを黙らせて私を椅子から立ち上がらせた。


「ちょっと来い」

それからまた低い声で唸ると、私のことを奥の席に引っ張っていく。

私を引き摺るようにして歩くホタルに気付いたお店のお客さんと店員たちが、みんな驚いた顔で私たちを見ていた。


「ちょっとホタル。急に何?」

戸惑う私の言葉に、ホタルが耳を傾ける気配はない。

そうしてホタルが私を連れて行った場所は、森岡さんと派手な印象の女の人が座っている半個室席だった。

壁と観葉植物で他の席と遮られているその席のそばまでやってきたとき、ホタルが低い声でつぶやく。


「気になってんなら、どういうことかちゃんと自分で確かめろよ」

「え?」

戸惑って視線をウロウロさせていたら、ホタルが苛立ったように小さく舌打ちをした。


「だったら、俺が確かめる」

「何を……?」

その問いかけに答えないまま、ホタルは私の腕を引いて森岡さんのいる半個室へと乗り込んだ。


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