ガーデンテラス703号



「ホタル……行こう」

ホタルの制服のシャツの袖をつかんで軽く引っ張る。

だけど、ホタルは森岡さんの前から動こうとしなかった。


「本当に知らないですか?2週間前、あなたは彼女とここで食事してたと思うんですが……」

それどころか、私のほうをちらっと見て森岡さんを挑発するような発言をする。


「ねぇ、何の話?」


ホタルの挑発に、森岡さんではなくて彼女のほうが反応を示す。

私を睨むように見てくる彼女の視線が痛かった。


「ちょっと、ホタル……」

今度こそ本当に退散しなければと、ホタルの袖を強く引っ張る。

そのとき、森岡さんが席から立ち上がった。


「外で話しましょうか。何か勘違いされてるみたいなので」

テーブルにナプキンを置きながら、森岡さんが唇で弧を描く。

そうしてホタルと私を見つめる森岡さんの目は少しも笑っていなかった。


「どういうこと?」

「大丈夫。この人たちが勘違いしてるだけだから、ここで待ってて」

不安そうな彼女に、森岡さんがにこりと笑いかける。


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