ガーデンテラス703号



「ホタル、これ……」

私の左手の薬指で光るのは、小さな粒のダイヤがついたエンゲージリング。

それが、ぴったりと嵌っていた。


「どのタイミングで渡すのがいいのかいろいろ考えてたけど、あんまり考えてたらまたいつ知らないやつに声かけられるかわかんねーし」

そう言いながら、ホタルが指を絡めて繋いだ手をぎゅっと握りしめる。


「俺が予約済みってことで、問題ない?」

耳元でささやかれたホタルの言葉に、胸がきゅーっと痛くなる。


問題なんて、あるはずない。

喉元まで込み上げてくる熱さを押さえながら、私は大きく頷いた。


「はい……」

お礼を言おうと振り返ったら、ふっと優しく微笑んだホタルが私の顎をつかまえた。


「誕生日おめでとう」

その言葉を言い終えると同時に、ホタルが私の唇を塞ぐ。

彼のキスに応えながら、私は繋いだまま左手をそっと握り返した。


この先もずっと。

私はあなたのことが大好きです。



《The Ring Fin》

< 388 / 393 >

この作品をシェア

pagetop