ガーデンテラス703号
「ふーん。そりゃ、ナンパもされるわけだ」
そうしたら、ホタルがなんだか不満気にそう言うから、妙に焦った。
「ホタルとデートだからってシホがいろいろ気にかけてくれたんだよ」
「わかってるよ」
再び不満そうな声が聞こえてきて、ホタルと見る夜景に盛り上がりかけていた気持ちがシュンとなる。
ホタルは怒ってるのかな。
知らない人に声かけられてたこと。
ぼんやりしてた私の落ち度かもしれないけど……
でも、髪もメイクもネイルも。
綺麗にしてもらったのは、全部ホタルのためだけなんだけどな。
うつむいていると、不意にホタルと繋いだ左手に違和感を感じた。
「あゆか。わかってるから、顔あげろよ」
ホタルの言葉に、少し落ち込んだ気持ちのままゆっくりと顔を上げる。
その瞬間、左手の薬指にキラキラと光り輝くものが見えて、思わず息を飲んだ。