ガーデンテラス703号
「できるだけ、ちゃんと自分の部屋で寝て。朝からホタルにくっつかれたら、仕事に行く気力がなくなっちゃう……」
「頑張れ」
「他人事……、というか、ホタル、いつもわざとでしょ!」
留まることのないホタルのキスを避けて手のひらで顔を覆うと、彼が私を抱きしめて首筋をぺろりと舐めた。
それに反応して身体をビクつかせると、ホタルが私の耳元でククッと笑う。
「そんなんで、来月から毎日同じ部屋で寝る予定なのにどうすんの?」
ホタルが顔を覆う私の左手をとって、指を絡めて握る。そこには誕生日にホタルからもらった婚約指輪が輝いていた。
誕生日の夜に正式にホタルにプロポーズされたあと、私たちはふたりで結婚に向けて準備を進めていった。
来月には入籍して、ホタルとふたりで新居に移ることになっている。
私たちふたりが703号室を出ることを知ったシホは、めちゃくちゃ淋しがって引き止めてきたけど。
「人の新婚生活、邪魔すんな」と、ホタルに一蹴されて。やや不服そうにしながらも、私たちの結婚を祝福してくれた。