ガーデンテラス703号

結婚式の予定はまだ先だけど、もうすぐホタルとの2人暮らしが始まる。

想像してみたら、かなりドキドキする。


「どうしよう……」

来月から毎日、家の中でホタルとふたりきりだなんて。毎朝同じ部屋で寝て、目覚めたらそばにホタルがいるなんて。


「何?ここにきて、嫌とか言わせねーけど」

背中からやや不満そうなホタルな声が聞こえてきて、フルフルと左右に首を動かす。


「そうじゃなくて。考えたら、すごくドキドキしちゃって」

「今さら?」

ホタルが拍子抜けしたみたいに、ふっと息を漏らす。


「俺は早く、誰にも邪魔されずにあゆかのこと独占したいけど」

耳元で囁かれた甘さの乗った声に、ドクンと胸が高鳴る。雰囲気に流されて振り向いたら、優しい目をしたホタルと視線が交わった。

ホタルの綺麗な長い指が、私の横髪をかきあげて撫でる。

どちらからともなく、おもむろに目を閉じたとき。枕元に置きっぱなしにしていたスマホのアラームが鳴り始めた。

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