ガーデンテラス703号
本日、2回目。本気で起きる時間を知らせるアラームだ。
その音を気にして瞼を開いた私にはお構いなしに、ホタルが重ねた唇の隙間から舌を入れてくる。
キスが深まるそばで、少しずつ音量を上げていくアラーム。それを無視して私に体重を預けてきていたホタルだったけれど、アラームが最大音量で鳴り出したとき、ついにイラつき気味に身体を起こした。
「あー。アラーム、うるせー」
枕元のアラームを睨んで止める、ホタルの顰めっ面を見上げて思わず吹き出す。
「目付き悪いよ」
「元からだよ」
アラームの止んだスマホを私に渡しながら、ホタルがベッドから降りようとする。
不機嫌そうに逸らしたホタルの横顔が愛おしくて、今度は私から彼に抱きつく。
油断していたのか、ホタルの身体は引っ張れば簡単にベッドの上に仰向けに倒れた。
「仕事だろ」
「うん。ホタルはまだ寝ててもいいよ」
ジトッと見上げてくるホタルを見下ろして、クスッと笑う。
「じゃー、おやすみ。いってらっしゃい」
「いってきます」
ちゅっ、と軽く唇を押し付けると、ホタルが驚いたように目を瞠って。それから、ふっと笑った。
【完・Alarm】