ガーデンテラス703号
「あぁ、ごめんごめん。基ちゃんも希ちゃんも誰のことかわかんないよね。基ちゃんはホタルのお兄さんで、希ちゃんはホタルのお姉さん。ふたりとも前にここに住んでたの」
「あぁ」
私が借りることになった部屋は、ホタルのお姉さんが使ってた部屋だって聞いている。
ホタルにはお姉さんだけじゃなく、お兄さんもいたんだ。
お兄さんも彼と同じように、常に人を睨んでるみたいな釣りあがった目をしてるんだろうか。
そんなことを考えながらシホを見る。
さっきまで笑っていたシホは、ワイングラスを手にリビングのドアをぼんやりと見つめていた。
「まぁ、基ちゃんはここを仕事で遅くなったときに泊まるビジネスホテル代わりに使ってたから、住んでたとは言えないんだけど」
リビングのドアに向かってつぶやくように言うシホの声は淋しげで、いつもの彼女らしくない。
「シホ?」
いつになく淋しげなシホが気になって声をかける。
そのとき、彼女が見つめていたリビングのドア開いた。