ガーデンテラス703号


「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。夜ごはんできてるよ」

「夜ごはん?」

シホの言葉に首をかしげる。


ここでの食事のルールは基本的に自分のものは自分で。

だから私も夜や休みの日は外食するか自分で食材を買ってきて料理する。

料理が苦手なシホは、私が何か作っていると分け前をもらおうとしたり、ホタルに何か作ってもらったりしているみたいだけど。

帰ってきてごはんができている、なんてことはまずないので驚いた。


「シホが作ったの?」


だとしたらちょっと…いや、だいぶ期待できない。

眉を寄せて渋い表情を浮かべると、それを見たシホがからりと笑った。


「まさか。あゆかのためにホタルが作ったんだよ」

「え?」


ホタルが私のため――…?

何それ。

シホを見つめてきょとんと首をかしげると、私の背後に回った彼女が私の両肩をつかんで前へと押した。

「いいから。とりあえず、早く中に入って」


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